逮捕や破綻も。2020年の不動産事件簿を振り返る/夏原武×全宅ツイ
早いもので2020年もまもなく終わる。東京オリンピック延期や新型コロナウイルス感染症が猛威を振うなど記憶に残る1年だったが、そんななか年間で最も話題になった不動産・事件を決定する「クソ物件オブザイヤー」が、例年通り開催された。
2020年で7回目となる本イベントだが、その最優秀作品の発表日である12月18日を前に、不動産業界の暗部を描いた人気漫画『正直不動産』(小学館、「ビッグコミック」連載中)の原案者・夏原武氏をゲストに迎え、全宅ツイの主要メンバー(全宅ツイのグル、あくのふどうさん、どエンド君、かずお君、はとようすけ)との対談が実現。
世の中の酸いも甘いも噛み分けた猛者6人が、今年の不動産業界を振り返りつつ、漫画づくりの裏話、悪徳業者に騙されないためのテクニックなどを語り尽くしてもらった。
不動産のプロが印象に残った出来事
――今日は『正直不動産』×「全宅ツイ」のコラボ対談ということで、まずはみなさんが2020年で印象に残る不動産事例を教えてください。
夏原武(以下、夏原):『正直不動産』の原案を担当している夏原武です。今年はコロナで一体どうなる? と思ってたけど、別に相場は下がらない、順調にリセールがかかってる。すごく不思議だけど、あの当時「コロナで不動産は下がる」とウソをばらまいてたやつが、今も偉そうに不動産の解説記事を書いているの見ると、なんか腹立つね(笑)。
印象に残ってる物件はアパホテル「六本木SIX」だね。細長い羊羹みたいな6棟の。日影規制を回避するためあの形なのだけど、アイディアがスゴいなと。
あくのふどうさん(以下、あくの):不動産ブローカーのあくのふどうさんです。今年は「姫路のトランプ」と呼ばれていた大川(護郎)さんの爆発が印象深いですね(※管理会社とのトラブルで窮地に陥り、代表を務める会社が銀行から取引停止処分に)。
大川さんの本を読んだら結構派手なことが書いてあって、それは実際に売り買いをしている自分の肌感覚とかなり違うもので、すごい違和感を感じて。「なぜ彼は上手くいってるんだろう?」と。それは結局、資金繰りの為に不動産を買い続けたって事だったんですね。途中からフェイクだったけど、短期間であの規模まで債務を拡大出来る関西のマーケットに驚きを覚え思いました。
全宅ツイのグル(以下、グル):全宅ツイファウンダーの全宅ツイのグルです。私はプレサンスの社長が業務上横領で逮捕された事件ですね(編集注:逮捕自体は2019年12月の出来事)。
東証一部上場の現役社長が逮捕されるんだという驚きがありました。でも、今になって『週刊文春』の報道で上場企業のCASA社長の暴言が取り沙汰されてますが、おそらくプレサンス元社長のほうが数倍スゴかったはずなので、録音テープがあったら買い取りたい。あんなもんちゃいますよ。
落とし所のない交渉はダメ
かずお君(以下、かずお):全宅ツイ会長のかずお君です。僕はレオパレスの件ですね。騒ぎ立てたテレビ局は面白かったかもしれないけど、関係者は結局、誰も得してないという。報道でレオパレスは背骨までガタガタになって、株主も大損、大家さんたちもツラい未来が待っている。
グル:あれ、結局、自分で自分の首絞めているようなもんですよね。
かずお:落とし所のない交渉仕掛ける奴は、たいていダメなんですよ。「騒がないでおいてやるから、俺のだけはこっそり直して、ちょろっと詫び金くれ」というのが一番正しい。
どエンド君(以下、どエンド):専業大家のどエンド君です。今年はパンケーキ松田さん(※タリーズコーヒージャパン創業者・松田公太氏。コロナ禍の飲食業界について独特な視点で苦境を訴え、話題に)ですね。「飲食テナントの売上が半分になったから家賃も半分になるよね」という謎理論と戦った1年でした。
グル:どエンド君、珍しくあれにマジギレしていましたよね。
どエンド:「売上苦しいから家賃下げて欲しい」というのは、こっちも商売人だから気持ちはわかるし、交渉だって応じるんですけど。なんだか松田さんだけは上から目線で「不動産の価値は半額が適正」(「汐留の一階にある弊社店舗は電通社員が戻らず、売上が5割減のまま。つまり、家賃も半値が適正?」7月6日のツイッターより)とかやってくるから……。
はとようすけ(以下、ようすけ):チラシギャンブラーのはとようすけです。僕は実需向けの一般住宅を扱っているのですが、コロナ禍では多くの再販業者が仕入れをストップしていました。でも、その自粛期間の3~5月に物件を買えた業者さんが今(12月時点)ではすごく儲かっていて、あそこでアクセル踏めた企業が勝っているなと感じています。今思えば、緊急事態宣言下はみんなが自粛していたので動きやすかったですね。何しろ管理人さんがいないからポスティングしても怒られない。
一同:(笑)。